米国バージニア州のオールド・ドミニオン大学(ODU)が2026年10月28日、3Dプリントした樹脂部品を「後から本物の構造部品に仕上げる」技術の研究で、米国立科学財団(NSF)から40万ドルの助成を受けたと発表した。3年計画のプロジェクトで、率いるのは機械・航空宇宙工学科のオレクサンドル・クラフチェンコ准教授。元博士課程学生のジメシュ・バガトジ氏と特許を取ったプロセスがもとになっている。
何が発明されたか——「粉の中で焼き締める」
技術の名前は「ホット・パウダーベッド・コンパクション(HPBC)」。手順は次の通りだ。
- まず、市販の多くの3Dプリンターが使う熱溶解積層(FDM)方式で、強化繊維を含む熱可塑性樹脂の部品を普通に印刷する
- 印刷した部品を細かい粉の中に埋め、粉ごと加熱・加圧する
- 粉が部品のまわりを包み、熱と圧力をあらゆる方向から均等に伝える。樹脂が溶けて内部の微小な気泡がつぶれ、層と層がしっかり一体化する
このとき繊維が溶けた樹脂の粘り(粘度)を調整し、形が崩れるのを防ぐ。金型は使わない。研究チームは、仕上がりが従来の圧縮成形品に近い性能になるとしている。
なぜ画期的か
FDMの3Dプリント部品には、「層と層の間が弱い」「中にすき間が残る」という弱点がある。複雑な形は作れても、力のかかる部品には使いにくかった。強くするには金型で圧縮成形するのが定石だが、形ごとに金型が要り、少量品では割に合わない。
HPBCでは、まわりの粉が「形に合わせて変わる金型」の役割を果たす。形状の自由さは3Dプリントのまま、強さは成形品に近づける。ただし条件は難しい。クラフチェンコ氏によれば、材料が流れすぎると形が崩れ、流れなさすぎると層がくっつかない。処理温度が約350℃に達する樹脂もあるという。
実証では、学生の卒業設計で作ったフォーミュラカー用のクラッチペダルとアクセルペダルにこの技術を使った。レースを想定した350ニュートン(約79ポンド)の荷重試験で、元のアルミ製部品と同じ強さを保ちながら、重さは43%軽くなった。今後は、より大きく複雑な部品への応用と、処理中に部品が縮む現象をシミュレーションで予測することに取り組む。同氏は、収縮を左右する仕組みと再現性を理解する必要がある、と述べている。
日本のものづくりへのヒント
この研究の面白さは、3Dプリンター本体を高価な機種に替えるのではなく、「後工程」で性能を上げるという発想にある。日本の町工場には、熱処理、焼結、プレスといった「加熱と加圧」の技術がもともと蓄積されている。印刷は既存の装置に任せ、仕上げの工程で価値をつける考え方は、設備投資を抑えたい中小企業にも応用しやすい。
また、少量品の治具や試作品を金型なしで「使える強度」まで仕上げられれば、金型費と納期の両方を削れる。まだ研究段階の技術ではあるが、「3Dプリント品は試作止まり」という前提を見直すきっかけになる話題だ。
出典
原文は英語。要旨を日本語で紹介しました。