経済産業省が2026年10月30日に発表した9月分の鉱工業指数(速報)で、生産指数(2020年=100、季節調整済み)は104.1となり、前月比2.2%上昇した。上昇は3カ月ぶりである。8月は熊本地震や台風の影響で前月比1.7%低下の102.6まで落ちていたが、その落ち込みをほぼ取り戻した形だ。経産省は基調判断を「一進一退で推移している」に据え置いた。
何が戻り、何が戻っていないか
押し上げたのは自動車工業で、前月比5.5%上昇(うち普通乗用車は3.3%上昇)。8月に地震や台風で止まっていた工場の稼働が再開したことが大きい。全15業種のうち上昇は8業種、低下は7業種で、上昇と低下が拮抗している。
- 上昇:自動車工業 +5.5%(地震・台風による停止からの再開)
- 低下:鉄鋼・非鉄金属工業 −1.6%(銅の電解設備のトラブルなどが影響)
つまり9月の上昇は「需要が強まった」というより「止まっていたものが動き出した」面が強い。業種の半分近くは前月より下がっており、経産省が判断を「一進一退」のまま動かさなかったのはそのためだろう。
町工場・中小製造業にとっての意味
当サイトで8月分を取り上げた際、「部品工場1つの停止が納期(D)を揺らす」と書いた。9月分はその裏返しで、止まったラインが戻ると、二次・三次の取引先には遅れていた注文がまとめて届く。8月に減った受注が9月から10月にかけて一度に戻る、という形になりやすい。
ここで気をつけたいのは、戻ってきた注文を「好況のはじまり」と読んで人員や材料を積み増してしまうことだ。指数は8月の落ち込みを取り戻したにすぎず、基調判断も変わっていない。D(納期)の面では、戻ってきた注文を残業で無理に詰め込まず、取引先と納入計画を早めにすり合わせたい。C(コスト)の面では、銅など非鉄の供給トラブルが続いており、銅材・電線を使う加工では価格と入荷日を週単位で確認しておきたい。震災・台風後の「戻り」と「需要の強さ」は分けて読み、翌月以降の数字で判断するのが安全である。