東京商工リサーチが2026年8月6日に公表した集計によると、2026年7月の「物価高」倒産は93件で、前年同月比20.7%増となった。円安局面に入って以降、これまで最多だった2024年5月の88件を上回り、2022年以降で最多を更新している。1〜7月の累計は533件(前年同期比26.6%増)に達した。
件数は増え、負債は小さくなっている
注目すべきは負債総額の動きである。7月の負債総額は195億9,200万円で、前年同月比16.7%減。件数が2割増えているのに負債が減っているということは、倒れている企業の一件あたりの規模が小さくなっているということだ。体力のある企業が大きく倒れているのではなく、小・零細企業が数多く力尽きている。
業種別では、サービス業他が26件(前年同月比52.9%増)、建設業が25件(同150.0%増)と目立つ。いずれも、資材・燃料・人件費の上昇分を、契約時に決まった価格へ後から反映しにくい業種である。
「値上げできなかった側」から順に消えていく
物価高倒産は、原材料やエネルギー、輸送費の高騰が直接の引き金になった倒産を指す。ただ、実際に効いているのは価格そのものより「転嫁のタイムラグ」である。仕入れは即日上がるが、売価は次の見積りまで動かせない。この時間差が数カ月続けば、利益率の薄い受注ほど先に資金繰りを圧迫する。
同社が前日の8月5日に公表した2026年7月の「人手不足」倒産も過去最多の63件で、うち「人件費高騰」が36件(前年同月比111.7%増)。仕入コストと人件費が同時に上がっている以上、どちらか一方を我慢して吸収する余地はもう残っていない。
町工場にとっての意味——コスト(C)は「据え置きが最大のリスク」
この統計は、価格を据え置いたまま受注を維持する戦い方が、すでに安全策ではなくなったことを示している。値上げを言い出して失注する痛みより、据え置いたまま資金が尽きる痛みのほうが速く来る局面に入った。
- 受注ごとの原価を月次で見直す——年に一度の原価計算では、材料・電力・運賃の上昇に追いつかない
- 転嫁の根拠を数字で持つ——企業物価指数や材料メーカーの改定通知を、交渉の裏付けとして手元に置く
- 薄利の定番品から見直す——長く続いている取引ほど、価格が実勢から離れている可能性が高い
件数が増えて負債が小さくなる、という数字の形は、規模の小さい会社ほど先に限界が来ていることの表れである。転嫁交渉の順番待ちをしている余裕は、そう長くない。