日本銀行が2026年10月1日に公表した全国企業短期経済観測調査(短観、9月調査)で、大企業製造業の業況判断DIはプラス24となり、6月調査から2ポイント改善した。改善は6四半期連続で、2018年3月調査以来、約8年半ぶりの高水準である。中小企業製造業もプラス14と、前回から5ポイント改善した。
何が景況感を押し上げたか
けん引役はデータセンターをはじめとするAI・半導体関連の需要だ。業種別では、鉄鋼が12ポイント改善のプラス6、窯業・土石製品が11ポイント改善のプラス22、非鉄金属が9ポイント改善のプラス45となった。中東情勢を背景に上がった原油などのコストを販売価格に転嫁する動きが、収益を下支えしているとも報じられている。
一方で、食料品は6ポイント悪化のプラス3、紙・パルプは4ポイント悪化のプラス36、自動車は1ポイント悪化のプラス11と、コスト高の影響を受けた業種もある。先行きは大企業製造業がプラス21(3ポイント悪化)、中小企業製造業がプラス12(2ポイント悪化)と、規模・業種を問わず悪化を見込む。
2026年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比7.6%増と、6月調査の6.8%増から上方修正された。中小企業全産業はマイナス4.7%(前回マイナス8.3%)で、上方修正されたとはいえまだ前年割れの計画だ。想定為替レートは全規模全産業で1ドル=154円23銭と、前回の152円57銭から円安方向に修正された。
町工場にとっての意味
数字の上では「好況」だが、中身は偏っている。AI・半導体、鉄鋼・非鉄といった川上の素材と設備側が強く、自動車や食品のように最終製品の価格転嫁が難しい分野は弱い。自社の取引先がどちら側にいるかで、同じ短観でも受け取り方は逆になる。
実務上は三点を押さえておきたい。第一にコスト(C)。素材メーカーの景況感が良いのは値上げが通っているからでもあり、仕入値が下がる局面ではない。見積の有効期限は短めに保つのが安全だ。第二に納期(D)。雇用人員判断は全規模で不足感が強く、特に中堅・中小企業はコロナ禍前の水準を上回る不足感とされる。好況の受注を取りに行くときほど、自社の人手で回る量かを先に確かめたい。第三に投資。大企業は設備投資計画を2桁増で維持している。取引先の新ラインや更新投資は、治具・部品・保全の新規引き合いにつながりやすい時期である。先行きDIが悪化見込みである以上、「今のうちに単価と条件を固める」交渉の材料としても、この短観は使える。