2026年7月28日午後4時27分ごろ、熊本県で最大震度7を観測する地震(令和8年熊本地震)が発生した。被災された方々に、まずお見舞いを申し上げる。
熊本県は近年、半導体関連工場の集積が進んだ地域である。本稿では、供給網の一端を担う中小製造業の視点から、生産設備への影響と復旧の経過を整理する。
各社の稼働状況
ルネサスエレクトロニクスは、錦町の錦工場(後工程)が7月29日夜から順次生産を再開した。熊本市南区の川尻工場(前工程)は8月5日から順次再開する予定で、再開からおよそ3週間でフル生産に戻る見通しとされる。川尻工場では壁面のひび割れや一部で漏水が確認され、純水の供給が一時停止した。空調と電力の供給設備は稼働を維持していたという。
ソニーの半導体子会社が菊陽町に持つイメージセンサー工場は、地震直後に生産を停止し従業員が避難した。人的被害は報告されていない。三菱電機も2工場で生産を停止した。
影響は自動車にも及んだ。トヨタ自動車は九州の3工場を8月5日まで、愛知県の田原工場を8月3〜7日に停止すると発表している。
止まった理由は「壊れたから」だけではない
注目したいのは、川尻工場が止まった直接の要因が、建屋の損壊よりも純水供給の停止だった点である。半導体の前工程は、電力・空調・純水・ガスといったユーティリティが一つでも欠ければ動かない。設備そのものが無事でも、周辺インフラが復旧するまでラインは立ち上がらない。後工程の錦工場が翌日夜に再開できたのに対し、前工程の川尻工場が1週間を要したのは、この差である。
町工場にとっての意味
最大の論点は納期(D)だ。半導体や電子部品の供給が数週間ずれれば、その先の完成品メーカーの生産計画が動き、部品の引き当ても連動して動く。取引先が九州の半導体・自動車系につながっている工場は、8月〜9月の内示が下方修正される可能性を織り込んでおきたい。逆に、他地域への代替発注が回ってくる可能性もある。どちらに転んでも、動けるように在庫と段取りの余裕を持たせておくのが現実的である。
もう一つは、自社のBCPを「建屋の耐震」だけで考えていないかという点だ。今回の事例は、設備が無事でもユーティリティで止まることを示している。停電時にコンプレッサーが落ちたら何時間動けるか。断水したら洗浄工程はどうするか。工場が止まる条件を一度、電力・水・エア・ガスの単位で書き出しておくだけでも、次の判断は速くなる。
品質(Q)の面でも、地震後の設備は要注意である。工作機械の芯出し、測定器の校正、治具の当たり——揺れたあとの初品検査は、いつもより一段厳しく見ておきたい。