何が発明されたか:セルロースを凍らせて乾かし、超軽量の「スポンジ」にする
京都工芸繊維大学 材料化学系の木梨憲司准教授の研究グループが、セルロースナノフィルムの分散液を凍結乾燥して成形する三次元多孔質材料「ジェットスポンジ」を開発し、2026年10月1日に科学技術振興機構(JST)と同大が開いた新技術説明会で発表した。空隙率は99%以上、密度は1立方センチメートルあたり1〜5ミリグラムで、材料のほとんどが空気である。薄いセルロースのフィルムが何層にも重なった積層構造が、押しつぶしても戻る弾性回復性と、断熱性、緩衝性を同時に生む。型に入れて凍結乾燥するため複雑な形状にも成形でき、精密機器向けのカスタム梱包インサート、温度管理輸送用の断熱パネル、ドローンや宇宙分野向けの軽量保護部材が用途として挙げられている。
なぜ画期的か:使い捨て前提の発泡材に「繰り返し使える」選択肢を加えた
発泡スチロールやポリウレタンは石油由来で使い捨てが前提、超軽量断熱材のシリカエアロゲルはもろさと製造コストが壁だった。ジェットスポンジは発泡材の長所を保ちながら、繰り返し使える弾性と自由成形性を併せ持ち、原料は紙やパルプと同じ植物由来のセルロースだ。興味深いのは、新しい化学物質を作ったのではなく、ありふれた素材の「構造」を変えて性能を引き出した点である。ナノフィルム化、分散、凍結乾燥という工程の組み合わせが新しい物性を生んだ。
日本のものづくりへの示唆
町工場に最も身近な接点は梱包だ。精密部品の納品で発泡スチロールの緩衝材を毎回切り出して使い捨てている現場は多い。部品の形に合わせて成形した緩衝材が繰り返し使えるなら、通い箱と同じ発想で梱包コスト(C)と廃棄物を同時に減らせ、輸送中の衝撃や結露から守る性能が上がれば納入先での不良率、つまり品質(Q)にも効く。もう一つは、型成形が主役になる点だ。凍結乾燥で形を決めるなら型の精度がそのまま製品の精度になり、樹脂成形や鋳造で培った金型・治具の技術がそのまま必要とされる。研究室の成果が製品になるまでには必ず「どう量産するか」の段階があり、そこは大学ではなく工場の仕事である。