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アイデア

〈オランダ〉混ざったプラごみを「分けずに分子へ戻す」という発想|BioBTXが世界初の商業プラントを建設、ものづくりへのヒント

プラスチックのリサイクルには、長らく同じ壁があった。種類の違うプラスチックが混ざっていると、溶かして固め直しても品質が落ちてしまう。だから現場は「まず分ける」ことに膨大な手間をかけてきた。オランダのBioBTX社は、この前提を反対側から崩そうとしている。分けるのをやめて、混ざったまま分子の段階まで戻してしまう、という発想である。

何が起きたか

BioBTXは、混合プラスチック廃棄物を芳香族化学品に変換する世界初の商業規模プラントを、オランダ北部デルフザイルの化学工業団地に建設する。年間の受け入れ能力は混合プラごみ約2万トン。ここから芳香族オイル約1万トンと、その他の持続可能な製品約8,000トンを生み出す計画だ。

取り出すのはBTX、つまりベンゼン・トルエン・キシレンである。プラスチック、塗料、溶剤、繊維、医薬品まで、身の回りの化学製品の骨格をつくる基礎原料だ。通常は石油から作られる。

技術の名前はICCP(Integrated Cascading Catalytic Pyrolysis/多段接触分解熱分解)。触媒を使った熱分解を段階的につなぎ、雑多な原料から狙った芳香族を取り出す。ラボとパイロットでの開発に14年をかけ、8,000万ユーロ超を集めて商業化に踏み切った。着工は2027年初頭、稼働開始は2028年半ばを見込む。素材大手のコベストロが出資している。

なぜ画期的か

従来のケミカルリサイクルの多くは、原料の純度に依存していた。単一種類のプラスチックを集められる工程内スクラップなら成立するが、市中から回収された混合廃棄物では歩留まりが落ちる。「分別が先、リサイクルは後」という順番が、コストの大半を決めていたわけだ。

ICCPは、その分別コストを触媒側の設計で吸収しようとしている。前工程で人手をかけて品質をそろえるのではなく、後工程の反応系のほうを、そろっていない原料に耐えられるように作り込む。同社は、こうして作った芳香族の温室効果ガス排出量を、石油由来のBTXに比べて70〜80%削減できると見込んでいる。

もう一点、条件が揃ったことも大きい。デルフザイルは化学工業団地であり、生み出した芳香族オイルの引き取り手が同じ敷地の中にいる。技術だけでなく、出口が近いという立地が事業化の判断を後押ししている。

日本のものづくりへの示唆

この話は、化学プラントの話としてよりも、工程設計の話として読むと面白い。「前工程で品質をそろえる」か「後工程を、そろっていない入力に耐えるように作る」か。日本の製造現場は前者が得意で、実際それが強みでもある。ただ、前工程の手間が人手不足で維持できなくなったとき、後者に切り替える選択肢があることは知っておいて損がない。

材料の受け入れ検査を厳しくして工程を安定させるのか、多少ばらついた材料でも同じ精度が出る加工条件を作り込むのか。品質(Q)とコスト(C)のどちらに寄せるかという、町工場でも毎日起きている判断と同じ構図である。

そしてもうひとつ。ラボから商業プラントまで14年という時間軸だ。良い発想がすぐ形になるわけではない、という当たり前のことを、この事例は数字で示している。

出典

※原文は英語です。要旨を日本語で紹介しました。

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