スペインのマドリード・カルロス3世大学(UC3M)の研究チームが、すり減った部分だけを交換できるモジュール式タイヤ「ECOTIRE」の試作を進めている。タイヤの骨格にあたるケーシングはそのまま使い、路面に接するトレッド(溝のあるゴム部分)だけを付け替える。2026年10月6日に技術系ニュースサイトTech Xploreが紹介した。
何が発明されたのか
通常のタイヤは、トレッドがすり減ると全体を交換する。研究チームによれば、トレッドはタイヤ重量の20%未満にすぎない。つまり、まだ使えるはずの8割以上がトレッドと一緒に捨てられている。ECOTIREは、トレッドとケーシングを化学的に一体化させる従来の方法をやめ、機械的に結合する方式に置き換えた。接着に頼らないため、トレッドの材料選択の幅も広がり、より環境負荷の低い材料を使える可能性があるという。
さらに、タイヤにセンサーを組み込み、路面に伝わる力、接地圧、横滑りの角度(スリップ角)、利用できる摩擦係数を計測する構想も持つ。水膜で浮くハイドロプレーニングや凍結の危険を検知し、ABSや横滑り防止装置、自動運転システムに早めに知らせることを目指している。
なぜ画期的か
研究チームの摩耗・摩擦試験では、シリコーンゴムの劣化が従来のタイヤゴムの約10分の1にとどまった。回転試験台を使い、荷重やスリップ角、空気圧を変えて評価した結果、試作タイヤの挙動は従来タイヤに近いとしている。研究を率いるダニエル・ガルシア=ポスエロ氏は、産業界への技術移転に近づいているとしつつ、一般に使われるまでには「まだ長い道のりがある」と述べている。次の段階は実物大での試験である。
ものづくりへのヒント
この発想の核心は「一番先に寿命が来る部分だけを交換できるようにする」ことだ。消耗部位と構造部位を最初から分けて設計すれば、製品全体の寿命が延び、廃棄も減る。工作機械の摺動部、金型の入れ子、治具の当たり面など、町工場の身近な製品にも同じ考え方は当てはまる。
ただし、分けた途端に「つなぎ目」が新たな弱点になる。機械的な結合部の精度や耐久性こそが品質(Q)の勝負所であり、ここは精密加工を得意とする中小製造業の出番でもある。また、交換部品が継続的に売れる仕組みは、売り切り型の製品を持つ企業にとって収益モデルを見直すヒントにもなるだろう。
出典
- Modular tire design aims to cut waste and monitor road conditions(Tech Xplore・2026年10月6日/提供:マドリード・カルロス3世大学)
- 論文:Applied Sciences (2026)(DOI: 10.3390/app16020878)、Measurement (2026)(DOI: 10.1016/j.measurement.2026.121968)
※原文は英語。要旨を日本語で紹介しました。