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アイデア

〈米国〉染み込ませるのをやめて「一度で焼き固める」という発想|36週間かかった炭素複合材が数日に、ものづくりへのヒント

米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)は2026年9月3日、カーボン-カーボン複合材(C/C複合材)の製造時間を数カ月から数日に短縮する新手法「FAST CAR²」を発表した。

何が発明されたか

C/C複合材は、炭素繊維を炭素(黒鉛)の母材で固めた材料で、摂氏約2,800度(華氏5,000度)を超える環境でも構造を保つ。ロケットノズルや極超音速機の熱防護、NASAの探査機パーカー・ソーラー・プローブの熱シールドといった、極端な高温にさらされる部位に使われてきた。

問題は作るのに時間がかかることだった。従来は、炭素繊維の骨格に炭素の蒸気を浴びせるか、炭素を多く含む樹脂を染み込ませては炭素以外を焼き飛ばす、という作業を何度も繰り返して密度を上げていく。この繰り返しに最長36週間、約8カ月かかっていた。

FAST CAR²は、この多段階の工程を一回の緻密化に置き換える。炭素を含む材料を繊維の骨格に入れ、大電流を流しながら加圧する「フィールド・アシステッド焼結(FAST)」で、数分のうちに緻密な最終形に固めてしまう。1インチのサンプルは1週間以内、より大きなサンプルでも数日で仕上がったという。研究チームはすでに6インチ、8インチの円筒サンプルを製造し、さらに大型のプレス機を確保して大きな部材の検証に進んでいる。

なぜ画期的か

この成果は、新しい材料を見つけた話ではない。同じ材料を「どう緻密にするか」の手順を入れ替えただけである。染み込ませて焼くのを繰り返す方式は、一回あたりの効果が小さいため回数で稼ぐしかなく、工程が長くなるほど設備は占有され、仕掛品が滞留する。APLはこれを「先端材料製造でもっとも遅い工程のひとつを、もっとも速い工程のひとつに変えた」と表現している。

速くなったことの本当の意味は、試作の回数が増やせることだ。8カ月かかる工程では、設計を一度変えるだけで年に一回しか試せない。数日で回るなら、形状や繊維配向を変えた試作を何度も重ねられる。開発速度そのものが変わる。

日本のものづくりへの示唆

C/C複合材そのものを扱う町工場は多くないだろう。だが構造は身近だ。含浸・乾燥・焼成を何度も繰り返す工程、めっきや塗装の重ね掛け、熱処理と矯正の往復——「一回で決まらないから回数でカバーする」工程は、どの現場にもある。

問うべきは、その繰り返しが材料の性質から来る必然なのか、それとも一回あたりに投入できるエネルギーや圧力が足りないだけなのか、という点である。FAST CAR²が変えたのは後者だった。工程表の中で一番リードタイム(D)を食っている工程を一つ選び、「これは何回に分けているのか。なぜ一回でできないのか」を書き出してみる。答えが「昔からこうだから」なら、そこが縮められる余地だ。

出典

※原文は英語です。要旨を日本語で紹介しました。

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