中小企業庁は2026年9月4日、今年度の最低賃金引上げに対応する中小企業・小規模事業者への支援策を公表した。前日の9月3日にすべての都道府県の地方最低賃金審議会で取りまとめが終わり、全国加重平均は1,177円となった。引上げ幅は過去2番目の大きさである。
支援策は「価格転嫁」「予算・税制」「省力化」「伴走」の四本立て
公表された支援策は大きく四つに整理できる。
- 価格転嫁・取引適正化:本年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)と中小受託取引振興法(振興法)を執行し、官公需や取適法の対象外となる民間取引も含めて価格転嫁を強化する。
- 予算・税制:販路開拓等への支援を持続化補助金等で行うほか、中小企業向け賃上げ促進税制、生産性革命事業による支援を進める。各種補助金では、賃上げを行う事業者への補助上限の引上げと加点措置を引き続き実施する。
- 省力化投資:省力化ナビや生産性向上支援サポーター制度といった全国的なサポート体制を整備し、省力化投資補助金・デジタル化・AI導入補助金で「省力化投資促進プラン」を推進する。
- 伴走支援:自治体と連携した支援機関のプッシュ型アプローチと、商工会・商工会議所による働きかけを起点とした相談対応を合わせ、今年度末までに100万件を目指す。
町工場にとっての意味
当サイトでは8月14日時点・8月30日時点と答申状況を追ってきたが、これで全都道府県の数字が出そろった。発効日は10月1日から順次で、地域によって11月中旬までばらつく。まず自社の所在地の発効日と新しい金額を確認し、パート・アルバイトを含む全員の時給が発効日時点で下回らないかを点検することが先決である。
そのうえで、コスト(C)の観点で見ておきたいのは支援策の並び順だ。補助金と税制よりも先に「価格転嫁・取引適正化」が置かれている。人件費の増加分を自社の努力だけで飲み込む前提には、制度側も立っていないということだ。取適法の対象となる取引であれば、労務費の上昇を理由とした価格交渉は制度に裏づけられた行為であり、遠慮する種類のものではない。
補助金を使う場合は、賃上げが加点・上限引上げの条件になっている点にも注意したい。どのみち上がる最低賃金を、申請書の中で「賃上げ計画」として先に宣言しておけば、同じ設備投資でも受けられる額が変わってくる。10月以降の人件費を織り込んだ見積書と、補助金申請の賃上げ計画は、同じ数字から作れる。二度手間にしないことだ。