コラム

持続化補助金の採択者11,038件を全部読んでみた——「通る計画」に共通する5つの傾向

「小規模事業者持続化補助金、うちも出したいけど、どんな計画なら通るのか」。よく聞かれる質問に、今回はデータで答えてみたい。

先日(2026年7月29日)発表された第19回の採択者一覧と、その前の第18回。商工会議所地区の採択者PDF(全国9地域・18ファイル)に載っている合計11,038件の「事業者名」と「補助事業名」をすべて抽出し、分類・集計した。採択一覧には各社の計画タイトルが一行で載っている。つまりこれは、審査を通過した事業計画1万件分の"見出し"データベースだ。読み込むと、はっきりした傾向が見えてくる。

発見1:最多は「設備・機械の導入」——ただし主役は機械ではない

補助事業名をカテゴリ分類すると、最も多いのは設備・機械導入系で約21%(第19回1,189件)。「導入」という単語だけで872件・15%に登場する。レーザー加工機、キッチンカー、厨房機器、ドローン——中身は実にさまざまだ。

ただし注意したいのは、採択された計画名のほとんどが「◯◯導入による△△」という構文になっていること。「レーザー加工機導入による金属・アクリル什器製造販売事業」「新冷媒機導入による次世代車両の整備体制強化とSNS販路開拓」(いずれも第19回・北海道の実例)。機械は手段で、後半の「売り方・売り先がどう変わるか」が主役なのだ。単なる「設備を買いたい」では、この構文にならない。

発見2:AIの言及が1回で倍増した

「AI」を含む計画は、第18回の66件(1.2%)から第19回は145件(2.6%)へ、ほぼ倍増した。「AI姿勢分析導入による可視化された整体サービス」(大阪・整体院)、「AI医療DXコンサル事業の広報基盤構築」(北海道)など、「AI×自分の本業」に絞り込んだ計画が並ぶ。

汎用的な「AI活用」ではなく、姿勢分析・在庫予測・接客翻訳のように用途を一つに特定しているのが採択組の特徴だ。この流れは、現在公募中の第20回ではさらに強まるとみていい。

発見3:それでも「看板」と「チラシ」は死なない

意外に思われるかもしれないが、第19回でも看板148件・チラシ110件・のぼり/DM/パンフ類を含む販促物系は全体の13%を占める。ホームページ・EC・デジタル系(約13%)とほぼ同じ規模だ。

地域商圏の店舗にとって、店の前を歩く人に気づいてもらう看板は、今もいちばん確実な広告だ。「デジタルでなければ通らない」は思い込みで、審査が見ているのは手段の新しさではなく、「誰に・どう届くか」の筋である。

発見4:4割超が個人事業主——「うちは小さいから」は理由にならない

第19回採択者のうち、法人は55%、個人事業主・任意団体が45%。屋号を見ると、スナック、理容室、整体院、カフェ、行政書士事務所と、まさに「町の商売」が並ぶ。都道府県別では東京(1,123件)・大阪(671件)・愛知(434件)が多いものの、この3都府県で全体の4割弱。残り6割は全国の地方の小さな事業者だ。

発見5:採択一覧は「30字ピッチの見本市」である

1万件を読んで最も役に立つ発見はこれかもしれない。補助事業名は約30字。その30字に、採択された計画は「手段」+「対象客」+「起きる変化」を詰め込んでいる。

  • 「座席拡充(ボックス席導入)による団体需要取り込み」(北海道・スナック)
  • 「農家専用の液体肥料を家庭用サイズに小分けして新たに販売」(北海道)
  • 「深夜スイーツ需要取込のための客席増設・内装改修」(神奈川)

自社の計画を書く前に、採択一覧PDFから同業の30字を10本書き写してみてほしい。どんな「変化」が評価されたのか、テンプレートが自然と頭に入る。

第20回は12月15日締切——いま準備すれば間に合う

現在公募中の第20回は、申請受付が2026年11月5日開始、締切は12月15日17:00。補助上限は通常50万円(インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円で最大250万円)だ。申請には商工会議所発行の「事業支援計画書(様式4)」が必要で、こちらの締切は12月4日。地元の商工会議所への相談は10月中に始めるのが安全だ。

1万件の採択データが示す「通る計画」の共通点をまとめれば——買い物の計画ではなく、売り方が変わる計画。あなたの30字は、どんな変化を約束するだろうか。

※当支部でも申請の壁打ち・計画書のブラッシュアップを受け付けています。お気軽にご相談ください。


出典・データについて

  • [小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>(商工会議所地区)採択者一覧](https://r6.jizokukahojokin.info/saitaku.php) — 第18回・第19回の全国9地域PDF(計11,038件)を抽出・キーワード分類(当サイト調べ・2026年7月)
  • [中小企業庁:第20回公募要領の公開について](https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260527002.html)
  • 分類は補助事業名の機械的なキーワード判定によるもので、複数カテゴリに該当する計画があります。個人・法人の判定は法人番号と名称に基づく推定です。
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